ずっと行きたかった中国へ:心を動かした旅(2/2部)
- Marc
- 4月15日
- 読了時間: 13分
更新日:4 日前
イントロダクション:ずっと行きたかった中国へ
黄山の山々を離れ、再び都市部へと向かう。次の目的地は、中国六朝の古都にして、近代史においても重要な意味を持つ都市——南京である。
しかし、同名の都市が存在することを知らず、誤って別の「南南京」行きの列車に乗ってしまったのだ。地図上で自らの進路を確認した瞬間、違和感に気づく——「南下しているはずなのに、方角が明らかにおかしい」。そうして、ようやく自らの過ちを認識し、旅程を立て直すに至った。
当初は本記事の中で南京までの移動や街の様子について記すつもりだったが、実際に訪れてみると、その魅力と奥深さにすっかり心を奪われた。ひとつの旅先として以上のものを感じたため、南京については改めて、一本の記事として丁寧に書き記すことにした。
→ 南京に関する記事はこちらをご覧いただきたい。
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I. 蘇州(Suzhou)─ 思いがけない夕陽との出会い
南京では、あまりにも多くの場所を訪れ、長時間歩き続けたせいか、心身ともにかなりの疲労が溜まっていた。
そのため、次の目的地である蘇州は、完全に即興で「休息の街」として過ごすことに決めた。
朝は目覚ましをかけずに自然に目を覚まし、10時半頃に遅めの朝食。何も計画を立てず、ただただ静かに過ごす。この街での一日は、リズムを整えるための「余白」となった。
宿の近くにあった近代的なエリアは、どこかフランス・パリのラ・デファンス地区を思わせる都会的な雰囲気があり、そのビルの真下には、驚くほど広く整った大型スーパーとモールが併設されていた。

ここで、昼食やおやつを買い、ビルの上階にある展望エリアのようなカフェで、湖を眺めながらゆったりと過ごす。
気がつけば、これほど長時間をモールで過ごしたのは人生で初めてだったかもしれない。
空間設計が実に緻密で、美しさと機能性を両立した構造には、素直に感心させられた。
そして、この街で最も印象に残ったのは、まったく予期していなかった夕陽との出会いだった。
夕方、特に目的もなく湖の方へと歩いていると、ふと空の色が柔らかく変わり始めるのが見えた。足を止め、湖のほとりに腰を下ろし、静かに空と水面のグラデーションを眺める時間が始まった。
街の喧騒が少しずつ遠のき、空が赤く染まり、水面が金色に反射するその光景は、まるで夢のようだった。
予定に組み込んでいたわけでもなく、「せっかくだし座ってみようかな」という軽い気持ちで始まったこのひとときが、旅全体を通じて最も美しい体験の一つになった。
2時間近く、ただ静かにその場に居続けた。「夕陽を眺める」という行為の中に、ここまで深い充実感を感じるとは思わなかった。
中国を旅する際には、ぜひ一度、夕暮れ時の湖畔で静かに過ごす時間を取ってみてほしい。
夜には地元のナイトマーケットへ足を運び、屋台のにぎわい、食べ物の香ばしい匂い、赤提灯の灯りに囲まれながら、旅の余韻を味わった。
静けさとにぎやかさが交差する蘇州の夜は、どこか幻想的で、忘れがたい空気に満ちていた。

翌朝:蘇州の古典と自然に触れるひととき
朝になり、心身ともにしっかりと回復した感覚があった。
まず訪れたのは、拙政園(せっせいえん)

古典的な中国庭園の最高峰とも言われるこの場所では、建築と自然の見事な融合を目の当たりにできた。
池に映る建物と柳の枝、石橋の曲線、そして静かに流れる風。歩くだけで心が整っていくような、そんな不思議な空間だった。
次に足を運んだのは獅子林(ししりん)

ここでは、迷路のように入り組んだ石のトンネルをくぐり抜けながら、童心に帰るようなワクワク感を味わった。
最後に訪れたのは、平江路(へいこうろ)

古い街並みと運河が織りなすこのエリアでは、木造の家並みと静かな水路が、まるで時を遡ったかのような風情を醸し出していた。
途中、小さな茶屋に入り、菊花茶をゆっくりと味わいながら、窓の外に揺れる柳を眺めていた。
蘇州は、「静けさの中にある贅沢」を教えてくれる街だった。
観光の中心にいるわけではないが、何気ない瞬間が、確実に心を満たしてくれる。
ここで過ごした時間は、次の旅路への準備期間として、まさに理想的だった。
II. 上海 ― 静かなる終幕
中国旅の最終目的地、上海へと到着した。
ここでは、これまで巡ってきた場所とは異なる空気が流れていた。街には外国人の姿も多く、英語が飛び交い、どこか「現実」に引き戻された感覚を覚えた。あの、誰にも知られない異国で自分だけの道を歩いていた数日間の静けさが、ここではもう存在しなかった。
まず訪れたのは、郊外の朱家角(Zhujiajiao)。

水の上に建てられた古い街並みは、その景観こそ魅力的ではあったが、観光地化が進んでおり、どこか表面的に感じられた。早々に街を後にして、市内へ戻った。

夕方、気分を変えるようにして陸家嘴エリアを目指す。
夕方になり、街の空気が少しずつ変わりはじめる頃、ぼくは上海の近未来的な都市エリア、陸家嘴(リュージャーズイ)へ向かった。地上を離れ、都市の心臓部へ足を踏み入れるような感覚。
目の前に現れたのは、上海を象徴する3本の超高層ビル。左から金茂大厦(Jin Mao Tower)、上海環球金融中心(Shanghai World Financial Center)、そして最も高くそびえるのが上海中心大厦(Shanghai Tower)――高さ632メートル、中国で最も高いビルだ。
この三本の巨大な建物が、まるで空を突き破るかのように並び立っている。

2024年12月31日|年末の上海散策
中国旅の最終日。
この日は、2024年最後の夕日を迎えるにふさわしい、濃密で印象深い1日だった。
まず朝一番に向かったのは、静かで神聖な空気が漂う玉仏禅寺。

白く輝く玉製の仏像は、まるで一年間の喧騒を洗い流してくれるようだった。

続いて訪れた静安寺では、金色の屋根が朝日を受けてまばゆく輝き、ビルに囲まれたその姿が、現代と伝統の共存を象徴しているように感じた。

その後は、昔ながらの石畳の路地が続く田子坊へ。ここでは、手作りの雑貨店やカフェが軒を連ねていて、まるでアートの迷路に迷い込んだような感覚に。
中国ならではの「ヒッピー」な雰囲気を感じられる場所だった。
昼過ぎには、歴史ある豫園老街と豫園を散策。

観光客でにぎわっていたが、古い建築様式や池に映る朱塗りの楼閣が、時代を越えて旅しているような気分にさせてくれた。
さらにこの日は、バドミントン好きとして外せない場所、上海YONEXショールームにも立ち寄った。ラケットやウェアがずらりと並ぶその空間に、自然とテンションが上がったのを覚えている。記念にちょっとしたお土産も購入して、大満足。
そして夕方、僕は再び上海中心大厦(Shanghai Tower)を訪れた。
この日はその展望台へ直行し、2024年最後の夕日をこの目に焼きつけた。ガラス越しに見えた夕日が、ビル群の間に沈んでいく様子は、旅の終わりと新たな始まりを感じさせる圧巻の景色だった。

展望台には多くの若者が訪れていて、みんなで写真を撮ったり、静かに空を見つめたり、それぞれの想いを抱いている様子だった。僕もこの瞬間を忘れまいと、ずっと脳裏に焼きつけていた。

その後、夜の街を歩きながら、**外灘(The Bund)**へ向かった。
西岸に並ぶ歴史的建築群と、対岸にそびえる近未来的な摩天楼――
ふたつの時代が向き合うその風景は、2024年の終わりにふさわしい舞台だった。
日が沈み、風が少し冷たくなる頃。
僕は川沿いに腰を下ろし、新年を待った。
「ここに立つ」ことが、旅のひとつのゴールだった
かつて親しい人が、2010年ごろにここを訪れ、記念写真を見せてくれた。
そのときから、この地にいつか自分の足で立ちたいと夢見ていた。
語学を学び、旅を計画し、国を越え、自分でその夢を現実に変えた。
年越しのカウントダウンイベントは、前年の事情で中止になっていたけれど、僕にとっては問題じゃなかった。

フランスを離れ、日本に拠点を置き、中国までやってきた。
そのすべての選択が、この夜、この景色に繋がっていた。
夢は、思い描くだけじゃなく、動くことで現実になる――
そんな実感と共に、2025年を迎えた。
2025年1月1日|最後の朝、最後の味
年が明けて、2025年の朝。
僕は目を覚ますと同時に、迷うことなく向かったのは、近くのローカルな中華料理屋さん。注文したのは、もちろん中国の餃子。皮はもちもち、中にはジューシーな具がぎっしり詰まっていて、旅の締めくくりにふさわしい朝食だった。
「これが最後か」と噛みしめながら、ひとつずつ大切に食べた。
やがて時計の針は出発の時間を指し、僕は空港へと向かった。

仕事も始まるし、そろそろ現実に戻るときだ。
でも、心はとても満たされていた。
III. 中国を旅するための6つのアドバイス
最後に、ぼくの経験から得た中国旅行に役立つ6つのポイントをご紹介します。これから中国を訪れる方にとって、少しでも参考になれば幸いです。
① 言語の壁:意外と高い
中国では、韓国と同じくらい英語が通じにくく、言語の壁を強く感じました。大都市であっても、英語が通じる場所はごく限られています。
ただし、以下のような対策をしておけば、そこまで不安に感じる必要はありません。
出発前に「ありがとうございます」「これはいりません」「~はどこですか」など、基本的なフレーズを数個覚えるだけでも印象が変わります。
Google翻訳アプリはとても優秀で、写真でメニューや看板をそのまま翻訳する機能も便利です。
モバイルバッテリーは必須です。翻訳、決済、地図などでスマホの使用頻度が高く、電池の減りが早いです。
VPN(例:ExpressVPN)*は事前にインストールしておきましょう。現地ではGoogleやYouTubeなどにアクセスできないため、必要な方は忘れずに。ぼくの場合、VPNを通せば普通に使えました。
② 決済方法:事前準備が鍵
中国ではQRコード決済が主流で、現金を使う場面はほとんどありません。
WeChat PayとAlipay、両方をインストールしておくことをおすすめします。ぼくはWeChat Payだけで99%の支払いが問題なくできました。
タクシーやレストランでは、最初のQRコードが読み取れない場合でも、予備のQRコードを提示してくれることが多いです。
日本など海外の口座から直接送金はできないため、現地の番号やアカウントが必要な場合もあります。
万が一のために、Western Unionなどで現金を用意しておくのも安心です。実際には、ぼくは一度も使いませんでしたが、念のため。
出発の1週間前にはアプリを設定し、送金や本人確認などを済ませておくことを強くおすすめします。
③ 移動手段:便利で快適
中国の交通インフラは非常に発達しており、高速鉄道や地下鉄の整備は素晴らしいと感じました。
新幹線のような高速鉄道はとても快適で、時間にも正確です。
地下鉄は路線が多く、分かりやすく案内されています。
シェアバイクやモバイルバッテリーの貸し出しも街中のあちこちで利用できます。
ホテルや列車の予約には、Booking.comが便利です。無料キャンセルや変更も可能なので、旅行中の柔軟な対応に役立ちました。
ただ、少し驚いたのは、地下鉄や駅に入る際に毎回セキュリティチェックがあることです。荷物をスキャンし、ゲートを通過する必要がありました。
南京では、地下鉄に乗るために専用のコインのようなチケットを購入する場面もあり、少し面白い体験でした。
④ 文化の違い:興味深い発見
中国では、日本やフランスとは異なる文化的な側面を多く感じました。
会話のボリュームが大きく、にぎやかな雰囲気です。
クラクションが頻繁に鳴り、交通量も多めです。
高齢の男性(50代〜70代)には、公共の場での喫煙や痰を吐く行為もまだ見られます。
電動バイクと高級車という二極化した交通手段も特徴的でした。
木の幹が白く塗られていたり、お店の入口にビニールシートがかけられていたりと、日本では見かけない光景も面白かったです。
⑤ 清潔さと安全性:意外な安心感
中国に対して「不衛生」「監視が厳しい」などのイメージを持っていましたが、実際に行ってみると、そうした印象は変わりました。
飲食店や街中は思った以上に清潔で、特にフランスと比べても問題ないと感じました。
防犯カメラや警備員は多いですが、日常生活で気になることはほとんどありませんでした。
監視社会という一面はありますが、旅行者として過ごす限りは、不便さや窮屈さを感じることはありませんでした。
⑥ 日本人へのプラス面
中国語を話せなくても、漢字を読める日本者には大きな利点があります。
たとえば、駅名や看板など、漢字の意味からなんとなく推測できることが多く、移動や観光の際にとても役立ちました。
⑦ 中国旅行で役立つアプリ一覧
地図&交通 :Baidu Maps 地下鉄の位置確認に◎(Google Mapは未対応多し)
支払い: Alipay / WeChat Pay 支払いはもちろん、送金・受け取りもできて便利。
翻訳: Google翻訳 メニューや看板を読み解くのに便利
VPN :ExpressVPN Googleサービス、SNS、メッセージアプリなどを使いたい人に
予約 :Booking.com ホテルや列車の予約に便利(前日キャンセルも簡単)
中国旅行の結論:
「ずっと行きたかった中国」という幼い頃からの夢。この旅は、ただの観光ではありませんでした。
その始まりは、憧れていたバドミントン選手・林丹の存在であり、日本の歴史を学ぶ中で感じた中国文化への敬意でもありました。
何年も前から計画していた中国留学は、コロナウイルスの影響で断たれ、夢は一度止まりました。だけど、あの時心に誓った「いつか必ず中国へ行く」という決意が、僕を動かし続けました。日本に移住し、生活が落ち着いた今、ようやくその思いを現実にすることができました。
そして訪れた初めての中国。
上海の眩しい夜景、嘉興の素朴な街並み、杭州の活気と静けさのコントラスト、黄山で感じた圧倒的な自然。
でも一番印象的だったのは、体験した「ギャップ」だった。もともと中国に対して悪い印象を持っていたわけではないけれど、世界中のメディアや、アクセスしづらい情報の影響で、多くの人が中国に対して偏ったイメージを持っていることは事実だと思う。すべてが、かつて思い描いていた“中国”とは少し違っていて、それがまた良かった。
だからこそ、実際に現地に行ってみて感じたことのすべてが、新鮮で驚きだった。都市はどこも巨大で、毎回違うメガロポリスに出会えるワクワク感があったし、インフラもテクノロジーも文化もものすごく発達していて、ご飯も美味しくて、人も親切で、生活もしやすい。
正直、こんなに快適で楽しい旅になるとは思ってなかった。中国という国が持つ「誤解されがちな姿」と、実際の「リアルな魅力」とのギャップが大きかったからこそ、この旅は、人生の中でも特別な体験の一つになった気がする。
憧れの地に立ったことで、自分の中の何かが静かに変わっていくのを感じました。
ただ「行ってみたかった場所」ではなく、過去の自分の想いに向き合い、未来へのヒントを見つける時間だったように思います。
目的地にたどり着くだけではなく、その道のりにこそ価値がある。そんなことを、改めて感じさせてくれた旅でした。
ずっと行きたかった中国へ:心を動かした旅(2/2部)- Marc
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